RESEARCH

 

私たちは,最先端の光技術に基づいた先端的な分光計測手法を開発・応用することで,凝縮相分子の反応ダイナミクスの観測と解明に取り組んでいます.特に,10フェムト秒(1フェムト秒 = 10⁻¹⁵ 秒)を切る時間幅を持つ極短パルスレーザー光を用いた独自の超高速分光法・非線形分光法により,反応に伴う分子の電子状態や構造の変化を極限的な時間分解能で時々刻々と追跡し,複雑分子系の反応性や機能の発現を決定づける精緻な分子機構を明らかにすることを目的としています.また,こうした極限分光計測を単一分子レベルで実現することで,分子1つ1つに固有かつ多様な反応性とその起源を解き明かすことにも挑戦しています.このように,私たちは独自の方法論に基づいて,分子の反応をあたかも手に取り目で見たかのように理解することで,化学反応の研究に新たな途を拓くことを目指しています.

凝縮相複雑分子の超高速分光・非線形分光

サブ10フェムト秒の極短パルス光を用いたポンプ-プローブ分光,時間分解ラマン分光,コヒーレント多次元分光を用い,反応に伴った分子の電子状態や構造の変化を極限的な時間分解能でリアルタイムに追跡することで,複雑分子系の反応や機能発現の必要十分条件を明らかにすることを目指しています.特に,極短パルスによって誘起されるコヒーレントな振動をプローブとして活用し,従来の理解を超えた光化学・光物理過程の新しい描像に迫ろうとしています.現在は,光受容タンパク質や光合成系の光反応初期過程,有機結晶の励起子ダイナミクスなどに焦点を当てた研究を進めています.

単一分子レベルでの超高速分光

室温・溶液中では分子の環境や構造は熱的に揺らいでおり,それは個々の分子の性質や反応性に大きな影響を与えます.こうした揺動する分子の状態を反映した,個々の分子本来の反応性を明らかにし,その多様性の起源を解明することは,タンパク質をはじめとする複雑分子の化学反応の機構を理解するために不可欠です.しかしながら,従来の方法では大多数の分子からなる集団の平均像」の情報しか得られませんでした私たちは,超高速分光法と単一分子分光法を融合させた革新的な方法論を開発し,分子1つ1つの個性を反映した反応ダイナミクスとその変遷(揺らぎ)を直接観測することを目指しています.

先端光源開発:極短パルス発生と制御

最先端の超高速分光法・非線形分光法の開発は,最先端の極短パルス光源の開発と切り離すことはできません.私たちは,紫外〜近赤外の様々な波長領域で,kHzから10 MHzに至る様々な繰り返し周波数で,パルス幅10 fs以下の極短パルス光を発生させるなど,実験に必要な極短パルス光源を全て独自に構築しています.また,SLMやAOMなどの空間光変調器を用いたパルス整形技術により,光電場の振幅・位相・偏光を自在に操作し,各種の超高速分光・非線形分光に最適な光を発生させます.


実験設備

温度・湿度管理された実験室で,最先端のフェムト秒レーザーシステムを用い研究を進めています.
市販では手にすることはできない極限的な性能を有する光源と分光装置を自作し,最先端の超高速分光研究に取り組んでいます.

Lab. 1

光源: PHAROS-SP, Light Conversion (since 2019)

OPAs: 350 - 1300 nmで可変, <10 fs.

主な手法: <10 fs時間分解吸収・ラマン分光         

2次元インパルシブ誘導ラマン分光

2次元電子分光

Lab. 2

Light source: Tangerine HP2, Amplitude  (since 2021)

Methods: TBA.


研究紹介動画

10フェムト秒時間分解吸収・ラマン分光など,
分子研でも基盤となっている実験手法の応用例
を,着任前の研究を中心に紹介しています.

2023年度春に開催したオープンキャンパス・
大学院説明会のガイダンス資料です.当グループの研究内容を短く紹介しています.

ヨビノリたくみさんの"予備校のノリで学ぶ
「大学の数学・物理」"にて分子研を紹介して
いただきました.当グループは前編3:56~です.